【海外起業録】上海での5年間から学んだビジネス哲学 〜アマゾン輸出からコンテンツビジネスまで、中国市場開拓の軌跡〜

上海進出のきっかけ – 2010年上海万博プロジェクト

31歳という比較的若い年齢で、予期せぬ形で上海万博プロジェクトの責任者に抜擢されました。それまでの経歴は、国内での新規事業立ち上げと撤退を繰り返す、いわゆる「新規事業請負人」のような立場でした。社内での実績は認められていたものの、海外事業の経験は皆無。そんな中での中国プロジェクト担当は、私にとって大きな転換点となりました。

2010年当時の中国は、2008年の北京オリンピックの成功を経て、さらなる経済成長を遂げようとしている時期でした。GDP成長率は10%を超え、世界の工場から世界の市場へと変貌を遂げつつありました。特に上海は、万博開催を控え、インフラ整備や都市開発が急ピッチで進められ、街全体が活気に満ちていました。

万博でのプロジェクトは、日本館に隣接するパビリオン内の1ブースを確保し、日本の商品を販売するというものでした。当時は「爆買い」という言葉が生まれる前から、既に中国人観光客の購買意欲の高さは知られており、大きな期待を抱いての出店でした。しかし、結果は惨憺たるものでした。想定していた売上の10%にも満たない実績に終わり、「びっくりするほどダメ」という表現がぴったりの結果となりました。

中国市場への本格参入 – 富裕層向けビジネスの挑戦

万博プロジェクトは失敗に終わりましたが、この6ヶ月間で築いた人脈や、中国市場についての知見は貴重な財産となりました。「この市場で必ず成功する」という強い決意のもと、新会社を設立することを決意。当時、中国では富裕層の急増が話題となっており、高級品市場が急成長を遂げていました。

最初に手がけたのは、銀座の老舗画廊と提携し、ルノアールの絵画を中国の富裕層向けに展示販売するプロジェクトでした。展示会場には多くの来場者が訪れ、一見すると手応えを感じる状況でしたが、実際の成約には至りませんでした。中国の富裕層の芸術品に対する価値観や、投資としての絵画購入という概念が、日本とは大きく異なっていたことが主な要因でした。

アマゾン輸出ビジネスでの成功

富裕層向けビジネスの失敗を経て、より現実的なビジネスモデルを模索。そこで着目したのが、中国と日本の経済格差を活用したクロスボーダービジネスでした。具体的には、中国で製造された商品を日本のアマゾンで販売するというモデルです。

特に注力したのがiPhoneケースなどのスマートフォンアクセサリー市場でした。中国深センで1個200円程度で仕入れた商品を、日本で2000円前後で販売。物流やカスタマーサービスの体制を整備することで、年商1億円規模にまで成長させることができました。利益率は約35%を確保でき、順調な事業展開が続きました。

アベノミクスによる事業転換の必要性

2012年末から始まったアベノミクスは、私たちのビジネスモデルに大きな影響を与えました。特に為替レートの変動は致命的でした。それまで1ドル80円前後で推移していた為替レートが、わずか数ヶ月で120円台まで円安が進行。仕入れコストが1.5倍に跳ね上がる一方、販売価格は据え置かざるを得ず、利益率は大幅に低下しました。

35%あった利益率は、為替の変動だけで実質的にゼロに近い状態まで落ち込みました。在庫リスクも抱えており、事業モデルの抜本的な見直しが必要な状況に追い込まれました。

コンテンツビジネスへの挑戦

アマゾン事業での利益を元手に、私の本来の専門分野であるIT・コンテンツ産業への回帰を決意しました。当時、中国ではスマートフォンゲーム市場が急成長を遂げており、特にソーシャルゲームの人気が高まっていました。

日本の人気ソーシャルゲームの中国展開や、WeChat(微信)向けのミニゲーム開発などを手がけました。しかし、中国特有の規制や、現地プラットフォームとの調整など、想定以上の困難に直面することになりました。

現地での生活と文化体験

ビジネス面では苦労の連続でしたが、上海での生活自体は非常に充実していました。特に印象的だったのは、食文化の豊かさです。日本と比べて物価が安く、特に外食は手頃な価格で本格的な料理を楽しむことができました。

また、趣味のバンド活動を通じて、現地の音楽家たちとの交流も深めることができました。言語の壁を超えて、音楽を通じたコミュニケーションを図ることができ、これは貴重な経験となりました。

上海グルメ案内 – 現地在住者のおすすめ

5年間の滞在で発見した、本当に美味しい上海グルメをご紹介します:

センチェン(生煎包)は、上海の朝食の定番メニューです。日本の餃子とは全く異なる食感と味わいで、外はカリッと焼かれ、中には熱々のスープと具材が詰まっています。特に朝一番で作られたものは格別です。

焼き小籠包も見逃せない一品です。通常の小籠包とは異なり、底面を焼き目をつけて提供される朝食メニュー。皮の食感と肉汁のバランスが絶妙です。

ランチョウラーメンは、ウイグル料理を代表する麺料理です。羊肉のスープと手打ち麺の組み合わせが特徴で、スパイシーな味わいが魅力です。

マーラータンは、約200円という驚きの価格で楽しめる庶民の味です。好みの具材を選んで、特製のスープで煮込む料理で、辛さと痺れる味わいが特徴です。

5年間の上海生活から得た教訓

中国市場での経験を通じて、ビジネスにおける重要な教訓を学ぶことができました:

市場環境の変化への対応力の重要性について、アベノミクスによる急激な為替変動は大きな教訓となりました。外部環境の変化は予測不可能であり、それに柔軟に対応できる事業構造を持つことの重要性を痛感しました。

現地化の重要性は、特に中国市場で強く実感しました。単に日本のビジネスモデルを持ち込むだけでは通用せず、現地の商習慣や消費者心理を深く理解する必要があります。富裕層向けビジネスの失敗は、この点を如実に示していました。

リスク分散の必要性も重要な学びでした。アマゾン事業への過度な依存が、為替リスクによって事業全体を危機に陥れる結果となりました。複数の収益源を持ち、リスクを分散させることの重要性を学びました。

これらの経験は、その後のビジネス展開において、貴重な指針となっています。

※この記事はポッドキャスト音声データを元にClaudeが書き起こし、編集したものです。